■一冊の本に出会わせてもらって
若いみなさんに宇宙の不思議さにふれてほしい。とてもそう思います。
わたしが宇宙のことを勉強したいと思ったのは高校生のときでした。
吟詠部・卓球部・生徒会に属していたわたしは、一番の気持ちのよりどころを科学部においていました。この写真は文化祭の準備の中で疲れて居眠りをしているときの写真です。とにかく無我夢中だったように思います。
そのときの年間部誌が「超新星」という名前だったのをなつかしく思い出します。
2年のときでした。1年先輩の山崎さんが、岩波新書「宇宙と星」(畑中武夫著)を紹介してくれました。そのなかで、わたしはこんなシーンを描写した文に出会いました。
イギリスの電波天文学者が、白鳥座の方向に強い電波を出す源があることをつきとめ、アメリカのパロマ天文台の世界最大200インチ望遠鏡をその方向に向けて光を集め1枚の写真を撮った。
そして現像のあと彼らが見たものは「われわれから二億光年の彼方で、二つの巨大な星雲、おのおのが千億の太陽を含む二つの巨大な星雲が、現実に衝突している姿であった。」と記されていました。
わたしにはすごい衝撃でした。
学問というのはこんなことを見つけだすことができる。
わたしはこのとき自分の進路を科学研究におくことを決意したように思います。
実はあとで山崎先輩から、あの話は違っていて、衝突ではなく二つの銀河が距離を離れて重なって写っていただけだと聞いてからも、いや聞いてから逆に、ますますそんなことがわかる学問があるなんて、と思ってしまいました。現像が仕上がったその瞬間、銀河の衝突だ!と思った感動は、そんな感動が味わえるなら一生をそれにかけてもいいと思えるものだったろう・・・。
■星には誕生と死があるなんて
星は宇宙の塵が凝縮されてやがてその過程で温度が上昇し、核融合が起こるようになり光と熱を持ち、太陽のような恒星が誕生します。そして燃え尽きて重い物質の固まりとなるか、超新星として爆発して死にいたるか、いずれにしても星には「誕生」と「死」があるのです。わたしたちの太陽は100億年たつと爆発すると見込まれています。
そのことが理論式と計算とでわかる。コンピュータ計算を駆使すれば、その様子をたどっていくことができ、それが数多くの星々の観測結果と一致する・・・・。学問とはそのようなものであります。
1054年古代中国で記録された夜空をいろどる明るい星の出現は、今の爆発の残骸とされる「かに星雲(クラブ・ネビュラ)」が燃え尽きるときの超新星爆発だったのだと、理論計算がおしえてくれるのです。
銀河系はなぜ渦をまいて回転しているのか、宇宙にはなぜ二連星が多いのか、宇宙の果てはどうなっているのか、私にはもう定かな説明が出来なくなりましたが、ひとつひとつの疑問が、大勢の天文研究者によって解き明かされていった過程は、学んでいても心躍ることがらでした。
なぜわたしが研究室をあとにすることにしたのかは、別な機会でお話ししようと思いますが、若いみなさん方にぜひ宇宙の謎にふれてほしいと思います。そのなかで、天体のひとつである日常の地球の上で、人間がともに生活していくことの意味合いを考えてほしいのです。
ぜひ、直接ホームページにアクセスして生の画像をみてください。世界各地のホームページもおいおい紹介していきます。
<徳島海南天文台訪問>
|